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                        序 言

 
本書はLydia White著Universal Grammar and second language acquisition (1989年, John Benjamins)の全訳である。この序言は第二言語獲得研究における原著の位置づけをすることと翻訳書刊行プロジェクトの経緯について述べることをその目的とする。
 
 第二言語獲得に関しては、従来外国語教育やバイリンガリズムに関する研究と密接な関係を保ちながら研究が行われてきた。それに対し、第二言語獲得研究と言語理論研究や第一言語獲得研究との関係はそれほど有機的なものであったとは言えなかった。ところが、1980年代に入るとその事態に変化が生じた。
 
 1970年代後半からMITなどを中心に開発が進んでいた「(普遍文法(UG)への)原理とパラメータのアプローチ」はまず第一言語獲得研究に大きなかつ根元的な影響を与えた。それはまず、生物学的理由により通文法的である文法的特性の集合体としてのUGの属性が現実の文法獲得過程において果たす役割に関する実証的研究の形をとり,つぎに(より特定的に)UGの原理に含まれるパラメーターの値...